2013年1月15日アーカイブ




日本の出生数が激減局面に入ったようだ。厚生労働省の推計によると、昨年の年間出生数は 103万3000人にとどまる見込みだという。それは2011年をさらに下回る戦後最少だ。
少子化は要因が複雑に絡み合って起こるが、未婚化が進んだ影響が大きい。
厚生労働白書によると、2010年の生涯未婚率は男性が20.1%女性は10.6%だが、2030年には29.5%、22.6%に及ぶという。 問題なのは、数字の大きさよりも理由のほうだ。かつてのように「結婚しない」
と選択しているわけではなく、結婚したくてもできない若者が増えているとみられている。 背景には厳しい雇用情勢がある。国立社会保障・人口問題研究所の第14回出生動向基本調査のデータを分析すると、 20~34歳の独身者男性の3割弱が年収200万円未満である。これでは「家族を養えない」として、結婚を諦める人が出てくるのも当然だ。 これは男性に限った話ではない。さらに低賃金や、大学を卒業しても非正規雇用どころか 就職そのものがままならない人も少なくない。自立することが難しければ、「親のすねをかじり続けるしかない」となる。 成人しても親に依存して同居する人の増大だ。 懸念すべきは彼らが年齢を重ねてきたことだ。もちろん自らの意思で同居している人も含まれるが、 総務省統計研修所の資料によると、同居する35~44歳の未婚者は2010年には男性184万人、 女性111万人の計295万人に上る。同世代人口に占める割合は男性19.9%、女性12.2%だ。 安定収入を得られる仕事への転職は難しい。女性の場合、結婚しても生活に困らない年収の結婚相手を待っているうちに 時間が過ぎ去ったという人もいるだろう。そもそも、年収400万円以上の独身男性そのものが少ないのだから結婚に結びつかない。 このまま、親と同居せざるを得ない未婚者の増大を許し続ければ、やがて日本社会は深刻な事態に陥る。 親の収入が安定している現時点においては生活に困ることがないので、問題は表面化していない。 むしろ、親にとっては、家庭内に「若い力」がいることで家事や介護を期待でき、持ちつ持たれつの関係ができている。 しかし、彼らを養っている親が高齢化して亡くなった途端に、彼らの生活基盤は崩れる。 不安定な雇用が長く続いてきたため、老後も多くの年金受給額を期待できない。 しかも、現在の高齢者世代と違って、彼らや彼らの親世代は兄弟が少ない。 頼れる親類がいないという状況も想定される。だが、対策は難しい。これから安定した職に就けたとしても、これまでの年金保険料の納付実績が乏しく、 低年金状態を避けることが、時間的に間に合わない人も少なくないからだ。 将来、生活保護に頼らざるを得ない低所得高齢者が日本中にあふれれば、その対策は財源捻出問題を含めて、深刻な社会問題となるだろう。 日本の制度の多くは、「終身雇用で就職した後、若くして結婚し、子供を育て上げて夫婦で老後を迎える」 という家族モデルを前提としてきた。しかし、いまや日本の家族形態は劇的に変化しつつあるのだ。 政府が想定してこなかった家族モデルに対応するための、新たな対応策が急がれる。

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